相続に必要な戸籍謄本を郵送取得する手順やTipsについて

先日親族が亡くなりました。葬儀の後、遺産相続の手続きを進めています。

自分が相続人だったときもあれば、そうでないときもありますが、私は過去4回相続手続きをやりました。時々法改正があってルールや進め方が変わりましたが、大きな考え方は変わっていません。

今回は自分の4回の経験から、ほとんどの相続人が実施し、わりと準備が面倒な、被相続人の戸籍謄本を郵送取得する手順を説明します。なお、初めて相続手続きを行う方を想定し、いくつか前提となる説明を書いています。それらをご存知の場合、「3. 戸籍謄本の入手方法 (郵送)」から確認ください。

1. 相続とその対象者について

国税庁のHPから取得できるドキュメントに定義があります。

「相続」とは、個人が死亡した場合に、その者の有していた財産上の権利義務をその者の配偶者や子など一定の身分関係にある者に承継させる制度のことをいう。
この場合、財産上の権利義務を承継される者のことを「被相続人」といい、これを承継する者のことを「相続人」という。
したがって、相続とは被相続人から相続人に対する財産上の権利義務の承継ということになる。

引用元:国税庁 HPから取得できる「民法の相続制度の概要」P.108

つまり、亡くなった人(被相続人)の持つ財産を、引き継ぐ権利を持った人(相続人)が引き継ぐ手続きのことです。相続人になる人はその世帯によって様々です。

たとえば、以下のリンクには図解付きで、対象者となる例がわかりやすく解説されています。

法定相続人の範囲 : 三井住友銀行

相続に必要な書類は対象によって異なりますが、以下3つはまず間違いなく共通して必要です。

  • 被相続人、相続人の戸籍謄本

  • 相続人の印鑑証明書

  • 遺産分割協議書 (誰が相続するかを文書で書いたもの)

印鑑証明書と遺産分割協議書は、5.1と5.2で簡単に補足しました。

2. 戸籍謄本とは?

戸籍謄本とは、その人の親子関係、婚姻関係を示したものです。それらを示すために定めた住所に登録されます。

「住所」とは、現在自分が住んでいる住所とは無関係であってもよいです。親子関係・婚姻関係がわかればよいので、存在しない住所で書かれることもあります。(余談ですが、私の持つ戸籍謄本に書かれている住所は、現地には存在しません)

戸籍謄本は、管理上の住所を管轄する市区役所で登録されています。存在しない住所といっても、東京都中央区のように書かれていたら、中央区の区役所で申請します。

2.1 戸籍が変わる条件

(1) 本人が結婚したとき

結婚すると世帯が変わるため、別の戸籍になります。

(2) 本人が自分の意志で戸籍を変更したとき

結婚は戸籍変更必須です。引っ越し、持ち家手続きなどでは任意ですが変える人もいるようです・

被相続人については、他の相続人がいないかを証明するために、出生から死亡までの全ての戸籍謄本を揃える必要があります。これは、相続人がほかにいないことを、金融機関などに証明するためです。

一生のうちに何度か引っ越しており、ついでに戸籍も変えている場合、出生から死亡までの戸籍謄本を取得するとき、すぐには行けない市区役所で管理されている戸籍謄本を取得する必要が出てきます。

2.2 戸籍謄本の入手方法 (直接 or 代理人申請)

管理上の住所を管轄する市区役所で申請します。直接行ける距離であれば、手続きで迷っても市区役所の担当の方に聞きながら進められるので、直接申請するのが一番楽です。

直接行けない距離だけど代理人が行ける場合、委任状を渡して行ってもらう方法があります。 委任状は各市区役所でフォーマットが用意されているので、HPを確認します。なお、下記に当てはまる場合は委任状は不要です。

例:戸籍全部事項証明書(謄本)戸籍個人事項証明書(抄本)の請求・・・請求者本人の配偶者、直系尊属(親、祖父母)、直系卑属(子、孫)、同籍者が代理となる場合、委任状は必要ありません。

引用元:文京区 戸籍証明請求書・戸籍請求用委任状


補足:直系尊属、卑属については、こちらに書かれている関係図が分かりやすかったです。

All Aboutの戸籍謄本に関する記事の画像

引用元:直系尊属と直系卑属とは?わかりやすく解説 [相続・相続税] All About


2.3 戸籍謄本の入手方法(コンビニで取得)

マイナンバーカードを持っていると、現住所と異なる戸籍謄本でも取得できることがあります。対応状況は市区役所によって異なります。また、対応している場合でも事前に登録作業が必要のようです。

コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】 | 本籍地の戸籍証明書取得方法

詳しくはこのリンクを参照ください。なお、被相続人の戸籍謄本は、現時点ではコンビニでは取得できません。

3. 郵送で戸籍謄本を取得するとき

直接行けず、代理人が立てられず、コンビニ交付が使えない場合、以下の必要書類を封筒に入れて、該当する市区役所に郵送します。

  • 各市区役所所定の申請用紙 (HPからダウンロードできます)

  • 返信用封筒 (切手を貼り付けておきます)

  • 普通為替か定額小為替 (現金書留が可の市区役所もあります)

  • 本人確認書類のコピー

以下、それぞれの書類について簡単に補足しました。

3.1 申請用紙には「相続手続きにより、出生から死亡まで全ての戸籍が必要」と書いておく

平成6年に戸籍の改正があり、手書き?表記だけではなく、コンピュータ表記の戸籍を市区役所が管理できるようになりました。ただし、いつからコンピュータ表記の戸籍を管理するかは市区役所によって異なります。

そのため、被相続人の戸籍謄本を取得するには「戸籍謄本(全部事項証明)」だけではなく「改正前原戸籍」(コンピュータ表記前の戸籍)の申請もしておくとよいです。

また、備考欄(なければ付箋を追加)には「相続手続きにより、出生から死亡まで全ての戸籍が必要」と書いておくとよいです。この記述があれば、市区役所の担当の方が必要な戸籍を調べてくれたり、遡りがある場合は知らせてくれる可能性があるからです。

なお、相続人の戸籍謄本を取得するだけの場合、改正前原戸籍は不要ですし、被相続人の戸籍謄本に自分の名前があるならば、自分の戸籍謄本を新たにとる必要はありません。


補足:改正前原戸籍については、こちらがわかりやすかったです。

引用元:相続手続き - 戸籍について/マネックス証券


3.2 返信用封筒は角形2号、切手は120-140円

戸籍謄本はA4で印刷されるので、封筒は角形2号で十分です。100円ショップでも売っています。

角形2号の封筒の例

送る封筒と返信用封筒の2つに切手を貼ります。戸籍謄本のセット数が4セット程度であれば120円(あるいは140円)の切手があれば送れます。

3.3 普通為替か定額小為替は郵便局で取得する

郵便局で換金できるお金(普通為替、定額小為替)を使って支払います。戸籍謄本取得に使われる為替は、主に2種類あります。

(1)普通為替

任意の金額に相当する証書です。下記の手数料を支払うことで郵便局で発行できます。

送金額5万円未満=430円
送金額5万円以上=650円

引用元:普通為替-ゆうちょ銀行

(2) 定額小為替

決まった金額に相当する証書です。50円、100円、150円、200円、250円、300円、350円、400円、450円、500円、750円、1000円の12種類があります。1枚ごとに100円の発行手数料がかかります。

100円(全金種共通)

引用元:定額小為替-ゆうちょ銀行

大抵、どちらかで支払うように指定されています。下記、ランダムに調べたところ、ほぼ定額小為替の指定でしたが、普通為替や現金書留を受け付ける所もありました。

大阪市:戸籍謄本・戸籍抄本の交付請求 (…>戸籍に関すること>戸籍証明の交付請求に関すること)

郵便による戸籍謄抄本等の請求書|高松市

郵便での各種申請|鹿児島市
(現金書留も可)

富山市 戸籍証明書等の郵便請求について
(普通為替、定額小為替、現金書留のいずれも可)

3.4 本人確認書類コピーは、住所がわかるものを準備する(パスポート不可)

郵送するとき、本人確認書類のコピーを同封します。市区役所によって異なる可能性がありますが、本人確認書類は例えば以下のように定義されています。

法務省HPで定義されている戸籍謄本取得時の本人確認書類の例

引用元:法務省:戸籍の窓口での「本人確認」が法律上のルールになりました

運転免許かマイナンバーカード(番号部分は見えなくする方がよさそう)をお持ちの方は、それで間違いないです。

ただし、郵送の場合パスポートのコピーは使えないと思った方がよいです。例えば下記のように書かれています。

ただし、戸籍の証明書を郵送で請求される場合、パスポートは本人確認書類とはなりませんのでご注意ください。

引用元:郵送等による住民票・戸籍等の請求書|東京都小平市公式ホームページ

4. 補足

4.1 印鑑証明書はコンビニでも取得できる

印鑑証明書は、自分が住んでいる市区役所で持ち込んだ印鑑を登録してもらったことの証明書です。理由はよくわかりませんが、相続手続きでは必ず使われます。

初回のみ、市区役所、行政サービスコーナーで登録します。私が複数の市区町村で試した範囲では即日発行できました。
マイナンバーカードで印鑑登録すれば、コンビニでも取得できます。初めて知りましたが、「地方公共団体情報システム機構」という団体が取りまとめているようです。

お住まいの市区町村に関わらず、全国どこでも最寄りのコンビニエンスストア等店舗内に設置されているキオスク端末(マルチコピー機)より証明書が取得出来ます。

引用元:コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】 | ホーム

今回、ファミリーマートのコピー機で印鑑証明書を取得しました。画面の案内に沿って進めるだけでした。コピー機端末にはICカードリーダがあり、ここにマイナンバーカードを置くことで本人証明となるようです。

ファミリーマートのコピー機で印鑑証明書を出力中の写真

4.2 遺産分割協議書はフリーフォーマット

遺産分割協議書は、「この遺産は誰が相続する」ということを書いた書類です。一見難しそうですが、インターネットでいくつかサンプルとなりそうなものを探して、必要事項を自分で書いて印刷するだけで、特に悩むことはありません。私はWordで作りました。(土地や家の相続は追加で何点か書類が必要になります)

5. おわりに

今回は相続に必要な手続きのごく一部を書き出しました。もし必要になったときのご参考になれば幸いです。